~たまには楽に力を抜きましょう~
ある戸建て現場の朝早く、親方入場。
師弟で仕事をしている。
親方大工:「さっき、道具屋に寄って来た」
手には買い物袋。
小物を少々買って来たようだ。
子方大工:「色々仕入れて来たんすね」
「あ、コンベックスが見えているっす」
親方大工:「今日から土台敷きだからな」
「新入りも来るから買い足した」
子方大工:「もう見えられてるっす」
ここで新入りメンバーがあいさつ、さよこだ。
さよこ:「おはようございます、よろしくお願いします」
なんと新入りは女の子だ。
建築科の学校を今春卒業予定。
大工志望。
さよこは令和にしては古風な名前。
だが文字にしたら全く可愛くない。
「三 四 五」(さよこ)。
何かの術式名のようだ。
親方は履歴書を見た時、女みたいな顔をした男だと思っていた。
この字では読めない。
そもそも人の名前とも思えない。
どう言う訳か、昨今では読めない名前が多いらしい。
キラッキラネーム?
マカロニはかたい表情。
今日現場の朝は浮き足立っている。
親方大工:「じゃぁ仕事始めるか!」
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最初なので新入りに説明をする。
親方大工:「コンベックスを知っとるか?」
さよこ:「はい」
親方は買ってきたコンベを見せた。
大きいのと小さいのがある。
親方大工:「僕たちの仕事はね、普段はこの小さい5、5mを使うの」
「だけど、土台の時とかはこの大きい7、5mも使うよ」
「これはね『4間』と言う長さまで測れるの」
子方大工: (ぼ、僕たち?)
親方大工:「コンベは使った事はある?」
さよこ:「小さい方のは学校で購入したのと同じ位の大きさみたいです」
「使った事あると思います」
、、初々しい。
親方大工:「じゃ、こっちの大きいコンベも使ったことある?」
さよこ:「それは使ったこと無いです」
親方大工:「よし、今日の土台作業ではこれを使うよ」
「先ずは目盛に慣れて貰う為に、このコンベを持って引っ張って見て」
「マカロニは、そこの基礎に爪を引っ掛けて持つ係な」
「さっちゃんは向こうの基礎の端までを測って見て」
子方大工:(さ、さっちゃん!?)
今日朝の親方はいつもと違う。
さよこは長さを測る為にコンベを持って歩き出す。
親方大工:「何ミリだ?」
さよこ:「すみません、まだ測れていません」
「スケールの最後の方がちょっとかたいみたいで、、」
親方大工:「うむ。最後の方は伸ばしにくくなる」
「気にしないで引っ張れば良い」
さよこはコンベックスと何やら格闘している。
綱引きをしているようだ。
さよこ:「すみません、不器用で」
女の子だから力がないのか、、
親方は今後が心配になった。
親方大工:「壊れたりしないから思い切り引っ張れ!」
さよこ:「はいっ!」
さよこは思いっきり引っ張った。
ビヨ〜〜ン!!
さよこ:「すみません」
「な、なんか壊しちゃったみたいです」
親方大工:「はぅっ!?」
(不良品か?あの道具屋、ハズレが多いんだよなぁ)
「マカロニ、直してやってくれ」
子方大工:「これ6、5mのコンベックスっす」
「7mの目盛が無いっす」
親方大工:「な、なんじゃこりゃ〜!」
「6、5mってなんだ?」
「何の為に使うんだ?」
子方大工:「6mまでの定尺材を扱う仕事には7、5mより小さくて便利らしいっす」
キリッとした顔。
初耳である。
小さくて便利?
最近のコンベはガンダムみたいにゴツゴツして巨大化しているでは無いか。
間違って買ったのもそれが原因かも知れない。
さよこ:「あ、私のコンベックス。よく見たら5mでした」
「5、5mじゃ無いですけど使えるでしょうか?」
親方大工:「ご、5メートル!?」
「3、5と5、5と7、5じゃないのか?」
そんなに種類が増えているとは。
親方大工: (道具屋のやつ、、一言教えてくれたら良いのに)
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道具屋:「へっくしょん」(店内にて)
チームボスのこれからが楽しみである。
終