大工と道具屋のここだけの話し
~たまには楽に力を抜きましょう~
ある戸建て現場の朝早く、親方入場。
師弟で仕事をしている。
親方:「さっき、道具屋に寄って来た」
その手に持つもの、、高圧内径4mmホースだ。
親方:「これ小さくて良いだろう?」
余りのコンパクトさについ買ってしまったそう。
子方:「噂に聞いてたけど凄く細いんですね」
「軽くて良さそう。親方の目利きは流石っす」
親方:「ホースだからな。空気が入ってれば一緒だろ?。これからはコレだよ!」
親方は満面の笑み。
新しい道具を手に入れると話題にもなる。
今日朝の現場は明るい。
親方:「じゃぁ仕事始めるか!」
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しばらくして親方が、子方の所にやって来た。
鬼の形相。
親方:「こ、このホース使えん!不良品かも」
手にはビス打ち機。
それはそれはスマートな4ミリホースが繋がれていた。
子方大工、実は道具屋「T」のブログ読者。
にわか知識があった。
子方:「親方、ホースは太い方が良いんですよ」
「細いと空気の量が少ないから、思うように使えない事があるそうですよ」
親方:「何!?空気なんだから一緒じゃないのか?」
子方:「どうもそうらしいっす」
子方はいつも世話になってる親方に恩返しのつもりでウンチクを話した。
今だけキリッとした顔。
親方:「本当か?使えるから商品になって売ってるんじゃ無いのか?」
「よし!良い事を聞いた。道具屋に教えてやる」
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親方:「あの細いホース使えんかった。全然だめ。あんなの売っちゃダメだよ」
道具屋:「コンパクトで軽いって喜んでる声もあるんですけどね」
親方:「全然だめ、全く仕事にならなかった」
「無駄な時間を使っちまったよ」
「不良品かも知れないし交換して」
ホースには既に名前を書いてある。新品同様では無い。
道具屋:「では、これを持って行って下さい。思い切り使えますよきっと」
「細いホースもどうぞ。でも、今回だけですよ」
「ここだけの話しにして下さい」
なんと6ミリホースだ。
ホースの交換でも問題が有りそうだが
親方は4ミリホースの値段でプラス6ミリホースもゲット。
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子方:「6ミリは良いそうですよ」
「道具屋さんの神対応。考えられないっす」
親方:「そうか?でも使えないホースを買わされたんだし、、」
親方は時間を盗られたと思っているらしい。
親方は一分一秒を惜しむ。
親方:「細いのが良かったから買ったのに、これじゃ前より太くなっちゃったよ」
「それにしてもあの細いホース邪魔になったな」
親方は必要な道具だけ持ち歩きたい。
今日朝の現場は暗い。
子方:「多分大丈夫っす。ピンネイラーとか小さいエア工具だと使えるみたいですよ」
親方:「それ用に持っておくの?面倒くせえよ。いちいち付け替えるなんて」
「一本のホースでなんでも使えないと、それが効率だぞ」
仕事の鬼だ。
親方は効率と言うワードが異常に好きだ。
親方:「じゃぁ仕事始めるか!」
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しばらくして、、、
親方の仕事ぶりを見て、子方が驚いた!!
4mmホースで普通にビスを打っている。
子方:「え!? 普通に使えてますやん?」
「確か、、使えなかったって、、??」
親方:「あれな、コンプレッサーにちゃんと繋がってなかったみたい」
「これ使える」
「でもあの太いホースが邪魔になったな」
子方:(親方は本当の鬼だ。道具屋さんごめんなさい)
終